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Hさん(重度知的障害、自閉症)の自立

2019年10月、H君の自立生活がスタートしました。H君は、重度の知的障害(自閉症)があり10年あまりの施設生活からの再出発です。約5年前、H君のお兄さんから弟の施設からの自立支援について相談は受けていました。

しかし、いろはにとっては初の知的障害者の自立支援、何の経験もノウハウもなく、当時は身体障害者の支援でさえ不安定な状況の中、支援側のスキルも不十分と感じていて、相談に対しても簡単にGOの返事は出せずにいました。

 その後、自閉症の方のドキュメンタリー映画や知的障害の自立支援に関する情報も少しずつ耳にする機会も増え始めてきていました。そんな中、H君からのお兄さんからも度々「何とか弟を自立させたい。出来るだけの協力はするし、何かあれば自分が責任を持つ。」という強い意志表明もあり、また団体内の人材もだいぶ育ってきた実感やタイミングもあって、いろは初の知的障害者の自立支援をスタートさせることになりました。

H君は重度の知的障害のため自分の気持ちを言葉で表現できません。そのため、まずは施設からの外出機会を増やし、支援する側との関係作りから始めようと考えました。しかし、施設側から当初は良い返事をもらえませんでした。重度知的障害者の自立など不可能という思いや他の入所者への影響を考慮したからだと思います。しかし、お兄さんの施設側への粘り強い説得もあって、少しずつ理解を示してくれるようになり、最終的には柔軟な対応をしてくれ、一緒に勉強していきたいとまで言ってくれました。

 その後は、定期的に施設からの日帰り外出を繰り返し、そして自費や福祉制度(地域移行)によるヘルパーを使っての宿泊体験を重ねていきました。というのも、H君自身への理解を深める事と、日々関わるヘルパーとの関係づくりを重視していたためです。宿泊体験中には、寝なかったり、道路への飛び出し、食への欲求、トイレに物を流す等…いろんなハプニングやトラブルを一緒に体験しながらH君自身を知ることに努めていきました。

支援側の私達やヘルパーもいつの間にか、H君との関りを楽しむというか喜びを感じるように変わってきたと思います。1年あまりの準備期間を経ると、私達も自信や手ごたえを感じられるようになっており、より具体的な目標設定を設けて動き出し、市の障害福祉課側とも相談しながら自立支援を進めていきました。

市内初の知的障害者の自立生活という事で、きっと行政側も戸惑いがあったと思います。そのため支援の中で蓄積してきた必要な情報については、安心してもらうためその都度提供していきました。並行して、自立後に通う生活介護先や、家探しはお兄さんが奔走してくれました。特に家探しでは相当苦労され、何件も断られ続けていました。障害者の自立がまだまだ醸成されていない中、しかも知的障害者となれば、知らないが故の反応なのでしょう。しかし、アプローチをし続けたことで理解ある大家さんにも出会え、結果、良い環境のアパートも見つけることができて無事に自立生活をスタートすることができました。

現在、H君の自立生活がスタートして3カ月経過します。順調に地域に溶け込み、今の生活が当たり前のように暮らしています。平日の日中は生活介護へ通い、その他の時間はヘルパーとの生活で、一緒にスーパーへ買い物に行ったり、ご飯を作ってもらったり、洗濯を手伝ったり、これまで行かなかったような場所への外出を楽しんだりもしています。ヘルパー側も、今ではそれぞれの支援の仕方、距離感や接し方に各々のカラーも出始め、H君自身もヘルパーごとの付き合い方が見えるようになってきたかもしれません。

振り返ると、H君の自立支援に関わることで、団体としても共に成長させてもらったと思います。


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